「加速するUSB Type-C®︎PD。コラボでワンストップを実現」

左) アナログ・デバイセズ株式会社 齋藤  一敬 様
中) サイプレス セミコンダクタ インフィニオン テクノロジーズ グループ 山田 祥之 様
右) グラナイト・リバー・ラボ・ジャパン株式会社 浦邉 康雄

 

スマートフォンや最新のノートパソコンに必須のインタフェースであるUSB Type-C®︎ PD。このインタフェースは、車の世界にも足を踏み込み始めている。2020年1月に開催されたカーエレクトロニクス展にて、アナログ・デバイセズ社とサイプレス社とグラナイト・リバー・ラボ・ジャパンの3社によるPDソリューションが話題を呼んだ。そのコラボレーションのきっかけや、展示会場へ足を運べなかったユーザーに各社の強みを聞いた。(編)

 

― それぞれの会社紹介を簡単にお願いします。

齋藤(アナログ・デバイセズ)アナログ・デバイセズはほぼあらゆる種類の電子機器で使用されている高性能なアナログ集積回路(IC)、ミックスド・シグナルIC、デジタル・シグナル・プロセッシング(DSP)ICの設計、製造、販売を行っている世界トップの企業です。

1965年設立。米国マサチューセッツ州ノーウッドに本社、20か国以上に拠点を持ち、活動しており、日本では12%の売り上げをあげております。製品の用途は産業、通信、オートモーティブ、コンスーマ向けに開発しております。

 

山田(サイプレス ):インフィニオン テクノロジーズ グループのサイプレスは、世界で最も革新的な車載や産業機器、スマート家電、民生機器および医療機器製品向けに、最先端の組み込みシステム ソリューションを提供するリーディング カンパニーです。サイプレスのマイクロコントローラーや、アナログIC、ワイヤレスおよびUSBベースのコネクティビティ ソリューション、高い信頼性と高性能を提供するメモリ製品は、各種機器メーカーの差異化製品の開発と早期市場参入を支援します。 サイプレスは、ベストクラスのサポートと開発リソースをグローバルに提供することで、彼らが従来市場を破壊しまったく新しい製品カテゴリを歴史的なスピードで市場投入できるよう支援します。

 

浦邉(グラナイト・リバー・ラボ):グラナイト・リバー・ラボは、ハイエンドなシリアル・インターフェスにフォーカスした電気試験および認証試験を中心としたエンジニアリングサービスの会社です。2010年に設立し、10カ国に渡り、USBやHDMIの認定試験機関として、製品開発の検証評価サービスを展開しております。

 

― カーエレ展で紹介した製品の特徴を教えてください。

齋藤:USB Type-Cのチャージャーでは、さまざまな出力電圧、出力電圧の設定があります。入力電圧よりも出力電圧が低い場合も高い場合もあり、充電も大電流で行われるため、高出力の昇降圧ICが必要となります。アナログ・デバイセズでは、高精度、高効率、低ノイズの昇降圧ICを提供しております。

 

山田:紹介した製品は、USB-C/パワーデリバリコントローラICです。MCUを搭載しており、プログラマビリティの高い製品です。例えば、車載に必要な機能を要求に合わせてカスタマイズ、あるいは最新モバイルデバイスの充電方式に準拠するためのアップグレードなど対応可能です。

 

浦邉:GRLでは、USB Type-C®︎ PDにフォーカスしたコンプラアンス・テスターかつ機能検証テスターである「GRL-USB-PD-C2」を提供しました。GRL-USB-PD-C2は、USB Type-Cのポートを2つ備えており、それぞれ100Wのソース及びシンクとして動かすことができ、USB Type-C®︎ PDに関わるあらゆるテストが可能な試験評価機として高い評価を得ております。

図1:カーエレクトロニクス2020の展示の様子

 

― 今回のコラボのきっかけは?

齋藤:USB Type-Cではポートに接続されたデバイスに適合した電圧、電流での充電を行う必要があります。デバイスの認識、出力電圧、電流の設定のためPDCが必要でありサイプレス 社とのコラボが最初のきっかけになります。また、アナログ・デバイセズとしては、1月に東京ビッグサイト行われますカーエレクトロニクス技術展に毎年出展しており、今年の1月の展示会ではLT8253 Dual ボードによるUSB Type-Cの展示もしました。このボードには、サイプレス社のPDCを搭載しています。今回、USB Type-Cの展示で GRL社にもご協力いただき、レギュレーター、PDC、評価環境と言った「設計から量産までのステージを可視化」することができました。GRL社の装置と組み合わせて、あらゆるデバイスがボードに接続された場合でも正常にデバイスを認識して適切な充電することを実際に波形やグラフでご来場者の方々に見ていただけたと思っております。

 

山田:もともとアナログ・デバイセズ社とお客様向けのリファレンスボード開発時においてコラボレーションをしておりますが、ICベンダーとしてbetter、bestなソリューションをお客様にお届けするためには、もはや一社のみの力では十分に多様化するニーズに応えていくことが難しくなってきていると考えていました。今回アナログ・デバイセズの齋藤様とGRL社の浦邉様からのご提案により、3社による展示に至りました。

 

浦邉:今回、幸いにアナログ・デバイセズ社から年末くらいにお声がけいただきました。アナログ・デバイセズ様とサイプレス様とのボードを展示するだけでなく、実際に製品設計を行う際の評価方法のご提案として、当社のGRL-USB-PD-C2の実機を持ち込み展示及び説明員として参画させていただきました。GRL-USB-PD-C2は、電源のソース側であるボードと繋ぐため、シンク側として動作させています。最大100Wまで引き込むことができるので、ボードの電源性能をフルに評価することができます。今回は、コンプライアンステストというよりは、Power Suite ProというGRL製のソフトウェアを利用し、実環境の電源デバッグ及び評価システムとして利用いたしました。

 

 

「小型化・低ノイズ・低発熱」で注目の車載マーケットへ、USB Type-C®︎ PDの普及を加速する。

 

― フォーカスしているマーケットは?

齋藤:今回の出展にも関係がありますが、車載マーケットに注視しており、AEC-Q100の認証も進めております。車載マーケットで求められる小型、低発熱、低ノイズなどの技術は他のマーケットでも活かせると考えております。

 

山田:UBSマーケットでは、数多くの製品をリリースしておりますが、特にUSB Type-C市場全体みており、コンシューマ、車載、インダストリなど幅広い用途でのUSB Type-Cの採用を見込んでいます。

 

浦邉:USB PDは主に、スマホやパソコンなどが中心に発展してきましたが、車載のニーズおよび可能性も十分に高いと感じています。また、POSなどの組み込みPCのマーケットにも注力していければと考えています。

 

― 車載マーケットにおける技術面でのメリットは?

齋藤:車載製品では小型、低発熱、低ノイズが必要です。通常、フロント、リア共のシートなど2組のポートが求められると思います。今回展示したLT8253を2つ用いたこのボードでは、1入力2出力で低発熱、低ノイズが実現できております(図2)。ノイズ対策も少ないEMC対策部品で低ノイズが実現できるため、限られた車載空間では非常に有効です。

図2: LT8253を2つ搭載したボード

 

山田:今回アナログ・デバイセズ社のボードに搭載しているPDCは、2ポート間のロードシェアリング(図3)をはじめ、高温時またはバッテリ電圧低下時のパワースロットリング機能、そしてパワーソースからコネクタ端までのハーネス部によるパワー補償についてダイナミックに制御することが可能です。

図3:ロードシェアリングとパワーバランス

 

3社の技術的知見が結集。豊富な資料と経験が開発初期段階から十分に活かせる環境を提供。

 

― 設計におけるポイントは?

齋藤:データシートだけでなく、アプリケーションノートなどの資料をホームページに掲載しております。評価ボードや LTspice® での回路図もご用意しておりますので、お客様のICの選定や 回路設計の際に、事前に動作を確認することができます。LTspice® は無償のシミュレーションツールで、弊社ホームページからダウンロードできます。実際に 弊社のICを使用し設計する際にも動作を確認でき、試作前の設計の際に事前検証を行え、試作でのリスクを減らすことができます。

 

山田:ICに求められる一般的なドキュメントは勿論、設計リソースを最小化するためのリファレンスデザイン(回路図、レイアウト図)を用意しています。最新のUSB-PDスペックに準拠しており、基本的なカスタム仕様のファームウェア対応はもちろん、回路図レビュー、コンプライアンステストのサポートなどエンジニアの負担を軽減する取り組みを行なっております。また、USBエキスパートによる充実した技術サポートを提供しているので、PDを初めて扱うエンジニアの方にも、安心して当社の製品を採用していただけます。
また、USB-C市場でのサイプレスの優位的な立場から、最新モバイル製品をはじめとする相互接続性の課題などの情報を事前に入手して設計に反映していますので、情報量においても、他社との圧倒的な違いを感じてもらえると考えています。

 

浦邉:PDのテストツールも、比較的早い段階で一度評価しておくといいかと思います。試験関係は、ある程度形ができてから実施するケースもありますが、評価ボードのレベルでもいいので、先行してテストしておくと安心です。

 

― 製造におけるポイントは?

齋藤:このICも含め弊社の電源ICは、小型、高効率、低EMIを目指しております。

温度グラフと写真は 60W出力 2出力での温度上昇の結果です(図4)。ヒートシンクやファンは使用しておりません。一番熱くなるところは、外部のFETになりますが、動作温度範囲が175℃まであるものも多く販売されておりますので、この小型の基板で2出力が 少ない温度上昇で実現ができることがわかると思います。グラフが示している通り、最大98%の高効率少ないロスで実現できていることの要因です。

図4:LT8253の動作を温度測定

また、2出力同時に動作させていても Cispr25 Class5の規格を満たしております。大電流の昇降圧ICは外部の4つのNMOSFETを駆動させるため他の電源ICに比べ、EMC対策が難しいですが、スペクトラム拡散や弊社の特許であるサイレントスイッチャ®という技術も用いてCispr25 Class5の規格を満たすことができております(図5)。

図5:EMI評価特性

しかも、まだこの結果は途中経過であり、USのエンジニアたちはもっと改善できるよう努力しています。この低EMIの結果も少ない周辺部品で対策ができおります。このためLT8253により小型なアプリケーションの構成が可能です。

 

山田:高度に統合されたICだからこそ少ない数の周辺コンポーネントで様々な機能を実現できるだけでなく、多彩なインターフェースにも対応できるため、例えば特定のDC-DCを選ぶことなく実装することが可能です。またプログラミングについても、お客様のニーズに合わせてオプションをご用意しています。

 

浦邉:今回の展示には出していないのですが、当社の量産用テスターV-UPという製品も用意しています。最終出荷検査の自動化が可能です(図6)。

 

図6:USB PD量産向けテスターソリューション「V-UP」

 

― 評価におけるポイントは?

齋藤:今回用意したボードの仕様を表にまとめてみました(表1)。

 

入力電圧範囲: 4~40V
出力電圧範囲: 1~25V
動作温度範囲: -40~150℃
出力電圧精度: ±1.5% (全温度範囲)
過電流、過電圧、短絡検出機能 有り

表1

入力には、直流電源を用意していただければ、すぐに評価可能です。USB Type-Cは2ポート搭載していますが、同じ内容のPDOを設定しています。また、PPSと呼ばれるプログラマブル・パワー・サプライにも対応しているため、将来的なニーズもあらかじめ盛り込んであります。

 

山田:今回のボードでは、齋藤様のおっしゃっていた通り、PPSにも対応させています。今後車載だけでなく、モバイル製品を中心とした様々な市場のニーズも出てくると考えています。サイプレス では、リファレンスデザインを基にしたベンチでの評価を実施しています。お客様へそのレポートを開示して設計に役立てていただいていますし、サイプレスのUSB-PDプロトコルアナライザーを業界最安値で提供しています。その他のツールは無償で提供しています。

 

浦邉:早く、安く、効率よく。多くの製品バリエーションが求められるからこそ、コラボーレションのアウトプットを活かしてもらいたいと思います。

 

― ユーザにおけるコストメリットは?

 

齋藤:これまでお話しさせていただいたように、従来はお客様において、部品の選定やコントローラの選定をしていただいていますが、今回のコラボを契機に、私たちがおおくのデータを提供することで、お客様のTime-to-Marketを実現するものと考えています。もちろん、その上で、サポートが必要な場合は、担当のFSE(Field Sales Engineer), FAE(Field Application Engineer)までご連絡いただけると幸いです。

 

山田:私たちも、アナログ・デバイセズ社と同じで、多くの技術情報と柔軟なカスタマイズ対応など積極的にサポートする体制を整えています。相互接続性情報も多く持っておりますので、是非活用していただきたいと思います。

 

浦邉:今回のコラボのきっかけでもあるのですが、これまで部品レベルや評価ボードといったレベルでのコラボレーションは今に始まったことではありませんが、今回は評価まで含めているといったところがポイントだと思います。GRLでは、コンプライアンステストも実施可能であり、部品選定から量産までの範囲をコラボでカバーしているという点が、新しい取り組みなのではないかと考えています。

 

― 今後の製品開発予定などありましたらお願いします。

齋藤:今回は 60W Dual 出力を中心にお話しさせていただきましたが、LT8253では27W,45W,100Wも対応しております。これらが使用できる環境が整っていけばと考えております。

 

山田:すでに次期製品開発に着手しており、2021年早期の量産化を目指しています。

 

浦邉:今後は、USB Type-CのFunctionalテストや、ブラウザ版によるコンプライアンステストなどまだまだ拡張性を持たせたテスト対応を目指しています。

 

― ありがとうございました。


アナログ・デバイセズ社 製品情報

https://www.analog.com/jp/products/lt8253.html#product-overview

 

サイプレス社 製品情報

https://japan.cypress.com/products/automotive-usb-type-c-and-power-delivery

 

グラナイトリバーラボ社 製品情報

USB Power Delivery and Type-C® Tester and Analyzer (GRL-USB-PD-C2)