By GRL Team on 5月 25, 2020

はからずしてはからざるものとは?クロストーク解析

こんにちは。GRLの永田と申します。GRLでは、HDMIDP、SIなどを中心に、測定業務に従事しています。今回のNEWS LETTER第3弾として、計測のノウハウ及び計測“あるある”を3回にわたり、ご紹介してみたいと思います。

  • 第1回:クロストーク解析
  • 第2回:オシロスコープトリガについて
  • 第3回:評価の中で注意が必要なことや、業務に役立に立てていただける内容での記事を予定しています。
    (もしこんな記事が読みたい!!といったリクエストがございましたらこちらまで是非ご連絡ください。)

 

第1回:クロストーク解析

クロストーク解析とは、どんなものでしょうか?もちろん、これをご覧いただいている方の多くは、ご存知の方も多いと思います。手始めに、解析に必要なオシロスコープの簡単な使い方をご紹介し、クロストークの発生の仕組みを解説、その解析方法とその対策という流れで説明したいと思います。

 

目次

 

解析に必要なオシロスコープの簡単な使い方

測定器は、どれも同じように見えて、案外違うものです。まずは、基本であるオシロスコープの使い方を簡単におさらいしてみましょう。

Keysight-Oscilloscope-NEWS-LETTER3

オシロスコープは、電圧を可視化するツールです。もちろん、マルチメータと言った製品も数字の可視化が可能ですが、連続した波形の状態を見るには、オシロスコープが必要です。

オシロスコープは、プローブと呼ばれるものをつないで、計測したい信号にプローブを当てると計測できます。

オシロスコープには、トリガーと呼ばれる機能があります。これを使うことで、目的の信号を正確に早く捉えることができます。

 

クロストークが発生する仕組み

導体に電気を流すと、磁界が発生します。動体が1本だけで、周りに影響を及ぼすものや影響を受けることがないものであれば問題ないのですが、2本あるとどうでしょうか?
ここでは、簡単ですが2つのクロストークの原因について、触れておきます。

図2のように2本近接しており、GNDと導体間にわずかな空間が存在すると、電界が生じます。そこにノイズおよび信号源があると、そこを伝っていきます。(浮遊容量と呼ばれます。)
反対側にある並行した導体があると、導体間で電界を形成します。ノイズ源となるような信号源は、わずかな容量でも通過してしまい、並行したもう片方の導体に電気を流してしまいます。これを容量結合によるクロストークと言います。

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図2:容量結合によるクロストーク

 

もう一つは、誘導性のクロストークです。
図3のように、2本近接しており、導体に信号が流れた場合に発生する磁界に起因するものです。導体が2本並行しているため、片側で発生した磁界の影響が、もう片側で発生します。これを電磁誘導といいます。これにより、電圧が発生し、ノイズ源となってしまう現象です。これを誘導結合によるクロストークといいます。

クロストークの基本的な原因は、この2種類のタイプが存在します。組み合わせてクロストークが発生する場合もありますので、早い段階で原因の切り分けが必要になります。

 

fig2-600x457

図3:誘導結合によるクロストーク

 

2種類のクロストーク

クロストークを抑えるために、基板設計段階から気を使って設計を行っていても、小型化を実現するため高密度実装の影響で電源や、その他の信号線から様々な影響を受ける場合があります。 その影響で信号にジッタが発生し通信品質に多大な影響を及ぼす場合があります。
クロストークには遠端クロストークや近端クロストークがあります。
遠端はレシーバから離れており、ノイズの減衰で比較的影響が少ない場合がありますが、近端では文字通りレシーバー直近で引きおこされていますので、影響が大きい場合があります。

日本語では漏話といい、固定回線がアナログ時代に他人の声が漏れ聞こえる現象がありました。
これは長距離平行する他ケーブルからの干渉を受け、他ケーブルを使用している方の声が漏れ聞こえる事がありました。実際に私も経験したことがあります。

 

クロストークの解析方法

クロストークが発生している場合の解析方法は、その切り分け作業から行うことになります。
検証が必要な個所のみ動作させるモードのあるデバイスは、不具合要因の切り分けを容易に行うことが出来ますが、出来ない場合の効率的に解析を行うことがなかなか実現できません。
そこでKeysightのN8833を用い対象の信号にクロストークがどの程度影響を及ぼすかを見てみました。

Crosstalk

影響を受けているであろう信号(Victim)、クロストーク源と疑われる信号(Aggressor)をプローブします。
下記オシロスコープ画面上段にクロストークによる影響を受けている信号(黄)、クロストーク源の一つと考えられる信号(緑)を入力しています。解析ツールを使用するとクロストーク除去後の信号(白)を簡単に確認することが出来ます。
中段は影響を受けているであろう信号のEyeパターンになります。
下段はクロストーク源と考えられる信号(緑)の影響を取り除いたEyeパターンになります。
今回は実施しておりませんがISI(シンボル間干渉)の除去を行うことが出来ます。

CrossTalk2

僅かなステップを踏むことでクロストーク源を特定し、どの程度影響を及ぼしているかを確認出来ました。
GRLでは上記のような解析業務も行っておりますので、機会があれば是非お声がけください。
特に信号源が高速になればなるほど、高度な設備が必要になります。

 

今回使用したツール:

・DSA-X93204A(Oscilloscope)

・N8833A こちら

・N4903B(Serial BERT)

 

クロストークの対策方法

VictimとAggressorのラインを並行で配線しない。やむを得ない場合は極力短くする。
GNDシールドを入れる。
回路のインピーダンス不整合を極力無くすことで反射による影響を少なくする。

 

まとめ

近年の高密度実装において、クロストークの影響を受けないようにするには、設計初期段階での十分な検証が必要になります。ただ、開発が進んでいくと様々な問題に直面し、解析に時間を要し、製品優位性に影響を及ぼすことがあるかもしれません。GRLでは、開発初期段階からのご相談にも応じております。トラブルになる前に、是非ご相談下さい。

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Published by GRL Team 5月 25, 2020